糖質制限が流行する中で、耳にする機会が増えたケトン体。最近では、サッカー選手の長友佑都選手が、ケトン体質への食事改善をしていることでも注目を集めています。
体に良さそうな気はするけれど、どんなメリットがあるのかを知らない方も多いはずです。そこで、ケトン体とはそもそも何なのか、メリットと注意点についてお伝えします。
そもそもケトン体とはなにか?
ケトン体とは、脂肪合成や脂肪分解する過程で発生する中間物質です。具体的に体内で形成されるケトン体には、アセトン、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸などがあります。
人にはエネルギーを作り出す方法がいくつかあり、ケトン体もその一つです。糖質に変わるエネルギー源としてケトン体を使うメリットはのちほどお伝えしますが、まずはエネルギーを作り出す方法を見ていきましょう。
解糖系回路とケトン体回路
人の体のエネルギー源となるのは、糖質、脂質、タンパク質です。そしてエネルギーとして使われる優先順位は糖質、脂質、タンパク質となります。この3つをエネルギーに変換するそれぞれの回路が、解糖系回路、糖新生回路、ケトン体回路です。
解糖系回路
1つ目の糖質系回路は、糖質を分解、エネルギーにする代謝です。解糖系回路では、食物から摂取した糖質を乳酸やピルビン酸に分解。エネルギーの放出・貯蔵、また、物質の代謝・合成に重要なATPという物質を生成する化学反応が起きています。
糖新生回路
2つ目の糖新生回路は、筋肉中のタンパク質や脂肪細胞からブドウ糖を作り、エネルギーに変換します。糖新生回路は、体のブドウ糖が不足したときの非常システムのような回路です。
ケトン体回路
上記の2つの回路は、糖質を分解したブドウ糖をもとにエネルギーを生み出す回路です。3つ目のケトン体回路は、体のブドウ糖不足が続き、エネルギーを生み出せなくなったときに糖新生からシフトします。
ケトン体回路では、ブドウ糖ではなく脂質を分解した脂肪酸、脂肪酸がエネルギーになるときに生まれるケトン体をエネルギーとして使用します。
また、ケトン体回路では食べ物に含まれる脂質や、体に蓄えられる脂質をエネルギーに変換することから、ケトン体回路では脂肪が燃焼するといわれます。
ケトン体体質になることで得られるメリットとその根拠
ケトン体回路がオンになっている状態をケトン体体質といいます。ケトン体体質になることのメリットとその根拠を解説します。
ケトン体体質のメリット
ケトン体体質のメリットをいくつか紹介します。
ケトジェニックダイエットができる
1つ目のメリットが、脂肪を燃焼してエネルギー源にできるため、ケトジェニックダイエットができることです。ケトジェニックダイエットは、脂肪をエネルギー源とするため、中性脂肪が減ります。糖質を制限するダイエット法で、たんぱく質を摂取するため、ほどよく筋肉をつけながら痩せられるのも特徴です。
アンチエイジング効果
2つ目のメリットが、ケトン体質にアンチエイジング効果が期待できる点です。また、老化を予防できるだけでなく、近年の研究ではアルツハイマー病の食事療法としての効果も期待されています。
メンタルの安定
3つ目のメリットが、メンタルが安定するという点です。ケトン体体質になると不安感やイライラした気持ちになることが減少して、穏やかな気持ちになる方が多くなるといわれます。
以上が、ケトン体体質になると体に表れるいくつかのメリットです。次にそれぞれの根拠も見ていきましょう。
メリットの根拠
1つ目にダイエット効果を得られる理由は、脂肪が優先的にエネルギーに変換されるためです。通常、人の体では糖質が優先的にエネルギーとして使われます。体がケトン体体質になっていると、その状態に変化がでるため、脂肪が燃焼しやすい状態となるのです。
2つ目のアンチエイジング効果の根拠は、サート3という遺伝子に注目です。カロリーを制限した状態に人体が置かれると、サート3という長寿遺伝子が活性化します。病気のもとになる酸化ストレスを抑えるサート3は、ケトン体体質になったときにも活性化します。糖質の摂取を最小限に抑えられることで、アンチエイジング効果に繋がります。
3つ目のメンタルが安定する理由は、血糖値の乱高下を避けられるためです。人は食事などから糖質を摂取すると血糖値が上昇し、その血糖値を下げるためにインスリンが分泌されます。短時間で血糖値が乱高下すると、眠気やイライラといった症状を引き起こします。そのためケトン体体質は、メンタル安定にも効果的なのです。
ケトン体体質を目指すには?
ケトン体体質を実現する方法
ケトン体体質を目指すには、低糖質・高脂質の食事が必要です。低糖質のために糖質制限をするときには、糖質抜きではなく、適正糖質量はきちんと摂取しましょう。
ケトン体体質を目指す際、1日の糖質摂取量の目安は50gです。一般的な糖質制限では約120gが摂取量の目安のため、ケトン体体質を目指す場合は、制限が厳しめです。
食事を低糖質に変えられたら、食事に良質な脂質をプラスしましょう!
また、ケトン体回路を動かしやすくするためには、1日に必要なカロリーのうち、60%を脂質で摂取すると良いといわれます。
低糖質・高脂質な食事を継続することで、ケトン体が作られやすい状態を維持しましょう。
ケトン体体質までにかかる期間
完全に糖質の摂取をやめた絶食状態の場合、最短4日でケトン体体質になります。しかし、4日間の絶食は、危険なためおすすめできません。
健康を害さず、ケトン体体質を目指すには、低糖質・高脂質な食事を最低でも2週間続ける必要があります。
2週間という期間の理由は、体内でケトン体回路が活発に働き、ケトン体が主なエネルギー源になるまでの期間が、およそ2週間のためです。
実際にケトン体体質に、体がどのくらい変化したのかを知りたい場合は、リトマス試験紙や器具で検査するのが良いでしょう。
ケトン体体質のチェック方法
リトマス紙
ケトン体体質の代表的なチェック法は、尿検査や血液検査です。尿検査では、リトマス試験紙のような紙(尿定性試験紙)を尿に浸して、色の変化によってケトン体の多い、少ないを確認できます。
尿検査の試験紙は、病院でもらう他に、市販のものをお店やネット通販で購入可能です。検査にかかる時間は、数分程度のため、体質の変化を確実に確認したい方におすすめの方法です。
手軽にケトン体体質を目指していくおすすめのアイテム
ケトン体体質を目指すためには、低糖質な食事と良質な脂質の摂取が大切です。
それでは、手軽にケトン体体質を実現できるおすすめのアイテムを見ていきましょう。
冷凍の低糖質弁当
継続しやすい食事としておすすめなのが、パッケージになっている製品です。パッケージになっている製品は、糖質量等を自分で調べたり、考えたりすることなく糖質制限を行えるメリットがあります。
その中でも、冷凍の弁当であれば、賞味期限を気にすることなく利用できます。
冷凍の低糖質弁当のメリットは、調理が簡単な上に、バラエティに富んだメニューを楽しめることです。調理の際は、冷凍庫でストックしている冷凍の低糖質弁当を温めるだけ。ケトン体体質を目指している方には、医師や栄養士監修の低糖質弁当がおすすめです。
MCTオイル
MCTは、日本語では中鎖脂肪酸と呼ばれる成分です。ココナッツやパームフルーツに含まれる植物成分のMTCは、一般的な油よりも素早く消化・吸収されるのが特徴といわれています。
そんなMTC100%のMTCオイルは、体内でケトン体の生成を促してくれる食品です。一般的な油の4倍早く分解されて、エネルギーに変換されるというMTCオイル。摂取の目安は毎食小さじ1杯ほどです。
注意点としては、消化吸収が速い油のため、一度に多量のMCTオイルを摂取すると、お腹が緩くなってしまうことがある点です。オメガ3脂肪酸が豊富に含まれるアマニ油のような良質な油と合わせて、適量を摂取しましょう。
EPAなどのサプリメント
ケトン体体質を目指すとき、オメガ3脂肪酸と呼ばれる良質な脂質の摂取が推奨されています。オメガ脂肪酸は、植物由来のαリノレン酸、魚類など由来のEPA、DHAの3種類です。それぞれ、血圧を下げたり、動脈硬化を予防したり、血糖値を改善したりする効果があるといわれます。
青魚由来で、食材からは接種しにくいEPAやDHAはサプリメントからの摂取もおすすめです。サプリメントを選ぶ際は、商品の科学的根拠や安全性が保証されている機能性表示食品や、特定保健用食品の製品を選ぶのが安心です。
ケトン体体質の注意点とその理由
ケトン体体質になることには、多くのメリットがあります。ただ、メリットだけではなく、ケトン体体質になるには注意も必要です。体臭やケトン体体質になるまでの期間など、注意点やその理由に関してもみていきましょう。
ケトン体体質の注意点
ケトン体体質には注意点もいくつかあります。
ケトン体体質までに時間がかかる
1つ目に、ケトン体体質になるまでにある程度時間がかかる点です。ケトン体体質に体が変化していく中で、ケトインフルエンザという症状を感じるケースもあります。吐き気や頭痛、糖質の渇望などを伴うケトインフルエンザの解決策は、ケトン体体質に体がなることです。
ケトン体体質の独特な臭い
2つ目に、ケトン体体質になったときの体臭の問題です。ケトン体体質になった方は、甘酸っぱい独特のニオイのケトン臭を放ちます。人によっては不快に感じるこの臭いですが、体がケトン体体質に変化している目安ともいえるでしょう。
食べ物に制限が多い
3つ目に食べられるものに制限が多い点です。ケトン体体質に体を変化させるときには、糖質を制限します。友人との食事や外食時にメニューを選ぶときには注意をしましょう。食べられるものに制限がある分、他の食事制限に比べて、カロリーを摂取しても太りにくいのは嬉しいポイントです。
注意点の理由
ケトン体体質の注意点のそれぞれの理由を解説します。
ケトン体体質になるまで時間がかかると、食べられるものが制限される理由は、ケトン体が生成されるのは、糖質の供給がストップされたときに作られるためです。
また、体が糖質をエネルギー源にできなくなってから、ケトン体が作り出されるまでは最短で4日かかります。絶食をせずにケトン体体質になるためには、約2週間ほどの期間が必要な点を考慮しておきましょう。
特有のケトン臭の原因となるのは、ケトン体に含まれるアセトンと呼ばれる物質です。どうしても臭いが気になる方は、ケトン体自体が酸性の物質のため、緑黄色野菜・果物・海藻・きのこ類のようなアルカリ性の食材を摂取しましょう。
まとめ
ケトン体体質になると、脂肪を燃焼してエネルギーに変換できるため、ダイエットやアンチエイジング効果があります。ケトン体を目指すなら低糖質な食事と良質な脂質の摂取が大切です。低糖質の冷凍弁当からMTCオイル、サプリメントまで、紹介した食品などを利用して、ケトン体体質を目指してみましょう。